コラム

2020.10.18

免疫力と腸内細菌 ~プロバイオティクス・プレバイオティクス・バイオジェニックス~

人の免疫細胞の7割は腸に集中していると言われます。口から肛門までは、1本の長い消化管としてつながっており、消化管は体内にありながら体外と直結しています。水分や栄養を摂取する一方で、病原体も運び込まれるため、それらを撃退する免疫機能が腸に集中していることは当然のことかもしれません。腸の中にある様々な細胞の働きによって病原体が退治されているわけですが、これらの免疫細胞と深く関わっているのが腸内細菌です。たとえば乳酸菌が増えると免疫力が増強されることはよく知られています。乳酸菌の細胞壁には免疫増強因子があって、それが腸のリンパ球を刺激していることが分かっています。このように「腸内フローラのバランスを改善することによって人に好影響を与える生きた微生物」のことを「プロバイオティクス」と呼びます。プロバイオティクスは以下のような条件を満たすことが必要です。

 

プロバイオティクスの条件

  1. 安全性が保証されている
  2. もともと腸内フローラの一員である
  3. 胃液、胆汁などに耐えて生きたまま腸に到達できる
  4. 下部消化管で増殖可能である
  5. 体に対して明らかな有用効果を発揮できる
  6. 食品などの形態で有効な菌数が維持できる
  7. 安価かつ容易に取り扱える

 

プロバイオティクスの持つ有益な効果として、便秘・下痢の改善効果、乳糖不耐症の改善効果、免疫機能改善による感染防御・アレルギー抑制効果、動脈硬化の予防効果、抗腫瘍作用などが報告されています。

免疫力を高めるには、腸内細菌の種類(多様性)と数を増やすことが有効です。そのためには乳酸菌飲料やヨーグルトなどで善玉菌を摂取するとともに、腸内細菌の餌となるオリゴ糖などを摂取することも重要です。一部の食物繊維やオリゴ糖のような、「腸内細菌の増殖・活性を変化させることにより体に好影響を与えて健康を改善する難消化性の食品成分」を「プレバイオティクス」と呼びます。

プロバイオティクスとプレバイオティクスを並行して摂取することが免疫力の増強に有益であることは以前から言われていましたが、近年、これらに加えて「バイオジェニックス」というもう1つの考え方が登場しています。バイオジェニックスは、腸内フローラを介さず体に直接働きかける乳酸菌の生産物質などを指します。死んだ菌も含めて乳酸菌の作り出す物質(代謝産物と菌体成分)が、腸内の免疫機能を刺激することで体全体の機能活性を促し、腸内フローラにも良い影響を与えるというメカニズムです。

当院では、バイオジェニックスとして、乳酸菌生成エキスである「アルベックス®」という製品を取り扱っています。医薬品ではありませんが医療機関専売品であり、砂糖・香料・保存料不使用で100%植物原料のメディカルサプリメントです(健康食品のため保険の適用は受けられません)。このエキスには、生きた乳酸菌ではなく、乳酸菌の分泌物(乳酸菌が作り出した物質)と菌体成分(乳酸菌の細胞物質)が含まれています。

「自分の乳酸菌」を育て、腸をケアする、ドクターサプリメント。全国600以上の医療機関で採用。100年の歴史から生まれた高品質サプリ。無添加・100%植物性

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ところで、冒頭で免疫細胞の7割が腸に集中していると書きました。免疫力の7割が腸だとすると、残りの3割は何でしょうか。それは自律神経系の働きです。自律神経には交感神経と副交感神経があります。交感神経は全身の活動力を高める神経で、主に日中に優位になります。逆に副交感神経は夜間、リラックスしているときに優位に働きます。神経系が免疫系に対して制御作用を持つことは以前から指摘されており、慢性的なストレスで交感神経系の活動性の高い状態が持続した場合、リンパ球の働きが低下することが報告されています。日常体験としても「テストの前に限って風邪を引く」「寝不足が続いたら風邪をひいた」などの経験は誰しもあるでしょう。これらはストレスで交感神経の緊張が続いた結果、免疫力が低下したことによるのかもしれません。 

プロバイオティクス・プレバイオティクス・バイオジェニックスに加えて、良質な睡眠をとり、よく笑い、体を温め、リラックスできる時間を作るなどして自律神経を整え、免疫力を増強してインフルエンザや新型コロナウイルスへの備えとしたいものです。

2020.10.05

不眠症と漢方薬

漢方薬を選択肢に

現在、日本では5人に1人が睡眠に問題があるというデータもあるほど、不眠症が身近な問題となっています。

日本で広く使用されているベンゾジアゼピン系などの西洋薬の睡眠薬は、いくつかの問題点が指摘されています。
1つは「持ち越し効果」と呼ばれるもので、睡眠薬の作用が翌日まで残ってしまい、日中に眠気や倦怠感を感じて判断力の低下を招く現象です。
高齢者では転倒や骨折の危険を高めるとされています。
もう1つは「依存性」の問題です。睡眠薬の服用期間が長くなると効果が減弱し、しだいに服用量が増えてしまったり、減量や中止をしようとすると離脱症状が出て眠れなくなるため、やめられなくなるというものです。

これらのことから、睡眠薬を使用することに不安を感じて、服用を躊躇している方もいらっしゃると思います。
そんな場合は、漢方薬を選択肢に加えてはいかがでしょうか。漢方薬だけで眠れるようになる方もいますし、漢方薬を併用することで西洋薬の睡眠薬の量を減らすことができたという方もいます。

 

不眠に効果的な漢方薬

不眠症で使用される代表的な漢方薬は「酸棗仁湯」(さんそうにんとう)です。不眠症の方の中には、「心も体も疲労困憊だけど、寝るときに限って目がさえてしまう」という方がいます。こういった症状に対して酸棗仁湯は効果を発揮します。酸棗仁湯の添付文書(薬の能書き)には「心身がつかれ弱って眠れないもの」という効能の記載があります。

日中のイライラや過緊張が原因になっているような場合は、「抑肝散」(よくかんさん)や「柴胡加竜骨牡蠣湯」(さいこかりゅうこつぼれいとう)が有効な場合もあります。
そのため、抑肝散または柴胡加竜骨牡蠣湯を朝・昼に飲んでおいて、寝る前に酸棗仁湯を使用するといったやり方もあります。

また、冷えがあると自律神経が交感神経優位となって不眠が起きることがあります。そのような場合は、「真武湯」(しんぶとう)や「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)など体を温める漢方薬を併用することが有効な場合もあります。

漢方薬は西洋薬の睡眠薬ほどの即効性はありませんが、概ね24週間くらいで変化を感じられることが多いと思います。西洋薬に比べると副作用は圧倒的に少ないのですが、酸棗仁湯などに含まれる甘草という生薬が、むくみ・血圧上昇・カリウム低下などを起こす(偽性アルドステロン症)ことがあります。

漢方薬の中には、睡眠に悪影響を与える生薬があります。
それは麻黄(まおう)という生薬で、エフェドリンという物質を含み、覚醒刺激があります。
麻黄を含む漢方薬は「麻黄湯」(まおうとう)が代表ですが、実はあの有名な「葛根湯」(かっこんとう)にも麻黄が含まれています。
そのため、不眠症の人が葛根湯を使用する際は注意が必要です。

不眠症は、背景に認知症・うつ病・夜間頻尿・睡眠時無呼吸症候群・レストレスレッグス症候群(むずむず脚)など色々な病気が隠れていることがあります。
そのため、多面的に診て診断する必要があります。かかりつけ医とよく相談して治療方針を決定しましょう。

2020.09.30

脂質異常の生活指導(吹田スコアと運動療法)

心筋梗塞の発症の可能性を図る点数表

LDLコレステロール(悪玉コレステロール)や中性脂肪が高く、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が低いと動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中の危険度が高くなることが分かっています。

全く病気はないけれど、健康診断でLDLコレステロールが高いと指摘された場合、お薬を開始するか否か判断に迷うと思います。

そんなとき、ぜひ参考にしたい指標があります。
吹田スコアといって、簡単に言うと心筋梗塞をどのくらい起こしやすいかを見る点数表です。

冠動脈疾患発症予測モデルと呼ばれ、狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患に強い影響のある脂質異常かどうかを判断し、冠動脈疾患がどの程度起こるか日本人のデータをもとに調べることができます。

年齢、性別、喫煙の有無、血圧、HDLコレステロール値、LDLコレステロール値、耐糖能異常の有無、家族歴の有無などをもとに計算します。
日本動脈硬化学会から「これりすくん」という名前で一般の方向けのアプリが使用できるようになっているので参考にしてみてください。

また、脈波検査や頚動脈エコー検査などで動脈硬化の進行具合をチェックすることも1つの判断材料になると思います。
これらの検査ですでに動脈硬化の進行が認められれば、お薬開始も選択肢でしょう。

LDLコレステロールや中性脂肪を下げるお薬は複数存在しますが、HDLコレステロールを上げるにはどうしたら良いかというご質問を多くいただきます。
HDLコレステロールの上昇に効果があるとされているのは、有酸素運動と体重減量です。

仕事は車通勤、デスクワークが中心という方は運動不足になりがちです。
実は、座っている時間が長いと死亡リスクが高くなるという研究結果があるのです。
幸いなことに、この研究では、座り仕事が多くても、しっかり運動をすれば死亡リスクが相殺されることが示されています。

運動を行う際は、運動強度に注目する必要があります

ゆっくり歩く程度の運動は、あまり効果がありません。安静時を1とした場合と比較して何倍のエネルギーを消費するかという運動強度の指標をメッツ(METs)といいます。

例えば、歩く・掃除機をかける・洗車をするなどは3.03.5メッツ程度、速足で歩く・カートを使わないゴルフのラウンドなどは4.04.5メッツ程度、ゆっくりとしたジョギングが6メッツ、エアロビクスは6.57.0メッツ程度、ランニング・クロールで泳ぐなどは8.0メッツといった具合です。
1日の座り姿勢が8時間以上の人は、運動量が週35.5メッツ・時を超えれば死亡リスクを相殺できるとされています(例:6.0メッツのジョギングを週6時間行うなど)。

ただし、運動は膝や腰などのケガを伴う可能性があるため、弱い強度から徐々に始めるのが原則です。

*心臓病などの持病がある人は、運動の制限が必要な場合があります。また、変形性膝関節症や腰痛症の方は運動により症状が悪化することがあります。かかりつけ医の先生とよく相談しましょう。

2020.04.17

新型コロナウイルス感染症流行における「こころの健康維持」

新型コロナウイルス感染症の世界的大流行(パン デミック)は、世界中で深刻な健康上の脅威を引き起こしていま す。そして、その対策として各国政府は、自宅待機や自主隔離、 社会的距離の確保など様々な施策を打ち出しています。それらの 対策は、医学的には感染拡大を抑えるために不可欠ですが、こうした慣れない生活スタイルが新たにはじまることは、こころの健康を保つために必要な日常生活上のバランスを大きく崩してしまう危険性があります。
こころ穏やかに過ごすために役立っている、最も重要な脳のメカニズムのひとつが、体内時計と呼ばれるものです。体内時計の働きを保ち、規則的な日常生活を送るために役立つポイントをご紹介します。

<日常生活を規則的に送るための自己管理術>

● 毎日、決まって行う日課を設定しましょう。

● 毎日、同じ時刻に起きましょう。

● 毎日、一定時間を屋外で過ごすようにしましょう( 密閉・密集・密接 の3密を避けて)。

● もし外に出られないとしても、少なくとも2時間は窓際で過ごし 日光を浴びましょう。

● 在宅での仕事や学習など毎日行う活動は、やる時間を決めましょう。

● 毎日、運動をしましょう。

● 毎日、同じ時間に食事をしましょう。

● 人との交流は、たとえ社会的距離確保の期間中であっても大切です。考えや気持ちを分かち合えるような方とコミュニケーションの機会を持つようにしましょう。

● 日中の昼寝(特に午後遅くの昼寝)は避けましょう。

● 夜間に明るい光(特にブルーライト)を浴びるのは避けましょう。コンピュー ターやスマートフォンのディスプレイも含まれます。

● 自分自身に合った起床と就寝の時間を決め、一貫してその睡眠リズムを保つ ようにしましょう。

以上、国際学会により共同で発表されている提言の日本語翻訳版の改変です。

2018.12.18

当院の関連病院

当院から患者様をご紹介させていただいた(もしくは当院へ患者様を逆紹介いただいた)実績のある医療機関です(順不同)。

  • 東邦大学医療センター大森病院
  • 昭和大学病院・昭和大学病院附属東病院
  • 荏原病院
  • 池上総合病院
  • 大森赤十字病院
  • NTT東日本関東病院
  • 牧田総合病院
  • 松井病院
  • 東京蒲田病院
  • 心臓血管研究所附属病院
  • 川崎幸病院
  • ニューハート・ワタナベ国際病院
  • 虎の門病院
  • 慶応義塾大学病院
  • 田園調布中央病院
  • 東京蒲田医療センター
  • 目蒲病院
  • 渡辺病院
  • 本多病院
  • 東急病院
  • 大森山王病院

 

2017.10.12

スギ花粉症に対するアレルゲン舌下免疫療法の新展開

当院ではスギ花粉症やダニアレルギーの方を対象とするアレルゲン舌下免疫療法を行っています。

従来のアレルギーに対する治療法は、症状を抑えるための治療(対症療法)が中心でしたが、

舌下免疫療法はアレルギーが発症しないように体を変えていく根本的な治療法です。

現在、スギ花粉症に対する舌下免疫療法では、「シダトレン」という薬剤が用いられています。

決められた用量を数年間にわたり服用することで、鼻水・鼻づまり、くしゃみ、眼のかゆみ、涙目

などの症状を抑える効果が期待できます。

しかし、シダトレンは、液剤で使用しづらいという問題点と、治療の対象が12歳以上の方のみ

に限定されるという問題点がありました。これらの問題に答える形で、新たに「シダキュア」という

お薬が製造販売承認を取得しました。これは錠剤(舌下錠)で、かつ5歳以上の方に使用できる

ことになっています。投与法もより簡便になり、使いやすくなることが期待されています。

発売時期はまだ未定とのことですが、来年(2018年)には使用できるようになるようです。

2017.10.07

緊急医療救護所の開設運営訓練

日本はこれまで、いくつもの大きな災害にみまわれてきました。

通信が途絶するような大規模な災害発生時に、確実に医療救護活動を展開するため、

本日2017年10月7日、大田区と医師会が中心となって緊急医療救護所を開設・運営する訓練が行われました。

当院も武蔵新田・下丸子地区の医療機関として、訓練に参加して参りました。

今回は、災害拠点病院となっている池上総合病院と、東京蒲田病院(災害拠点連携病院)、目蒲病院(災害支援病院)、本多病院(災害支援病院)

の4病院を中心に近隣の医療機関がグループ化され、4か所で同日に訓練が行われました。

当院は、大規模な災害時には、目蒲病院を中心とする医療救護活動に参加することとなります。

本部との通信訓練、防災テント・担架、毛布・発電機などの物品の確認、動線やトリアージエリアの確認などを行いました。

今後も訓練を定期的に行い、災害に備える予定となっています。

2017.05.31

アレルゲン舌下免疫療法

最近、スギ花粉症やダニによるアレルギー性鼻炎に対するアレルゲン舌下免疫療法が注目されています。

現在、アレルギーに対する薬による治療法は、対症療法(症状をおさえるための治療)が中心で、治療薬がなくなると、症状は、ぶり返してしまいます。また、アレルギーに対する薬には眠気という副作用があり、生活の質を落とす要因になっていました。

これに対し、アレルゲン免疫療法は、アレルギーの原因(アレルゲン)に対する個人の持つ過敏性を、自分の免疫で抑制していく、発症しないように変えていくという根本的な治療法です。アレルゲン免疫療法は、100年以上も前から行われている治療法です。アレルゲンを含む治療薬を皮下に注射する皮下免疫療法が主に行われてきましたが、近年では治療薬を舌の下に投与する舌下免疫療法が登場し、眠気もなく自宅で服用できるようになりました。

1日1回、少量の治療薬から服用をはじめ、その後、決められた一定量を数年間(推奨3年間)にわたり継続して服用します。初めての服用は、副作用が出ないか観察するため院内で行い、2日目からは自宅で服用します。

長期にわたり正しく治療が行われると、鼻水・鼻づまり・くしゃみ・目のかゆみ・涙目などの症状をおさえる効果が期待できます。症状が完全におさえられない場合でも、症状をやわらげ、通常のアレルギー治療薬の減量が期待できます。

アレルゲン舌下免疫療法は、スギ花粉症またはダニアレルギー性鼻炎と診断された12歳以上の患者様が受けることができます。

2017.01.16

患者さんが当院の短歌を詠んで下さいました!

2016.09.29

インフルエンザワクチンは、いつ接種するのが良いのか?

気温が低下し、インフルエンザや風邪がはやる季節が近づいてきました。

当院で診察させていただいた患者さんの中にも、すでにインフルエンザの方がいらっしゃいました。

近隣の学校でも発生が確認されており、今後の流行状況を注視する必要があります。

インフルエンザのワクチンは、何月ごろ接種するのが良いのでしょうか。

インフルエンザは例年12月から3月ごろに流行し、1月から2月にピークを迎えます。

また、ワクチンの効果が出現するまでには接種から2週間程度かかり、ワクチンの予防効果が期待できるのは接種から5か月程度までとされています。

これらの事情から、11月中旬までのワクチン接種をおすすめしています。

遅くとも12月中旬までには、ワクチン接種を終えることが望ましいと言えます。

2016.08.27

物忘れと認知症の違い

認知症には、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症などのタイプが存在します。

アルツハイマー型認知症は、現在日本で最も多い認知症です。緩徐に進行し、記憶障害などの認知症症状を呈します。脳に老人斑(アミロイドβ)が蓄積し、大脳皮質の全般的な萎縮を認めます。

脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害により認知機能障害が出現します。脳の障害が起きた場所によって症状が異なる「まだら認知症」となります。

レビー小体型認知症は、繰り返す幻視体験、早期よりみられるパーキンソニズムなどが特徴の認知症です。(パーキンソニズムとは、脳内のドーパミンが不足して起きるパーキンソン病と同じ症状を示す状態で、動作が遅い、表情が乏しい、手が震える、手足が固い、歩幅が狭くなるなどの症状です)

加齢に伴う物忘れと認知症とは、どのように異なるのでしょうか。

代表的な違いを表にまとめてみました。

加齢に伴う物忘れ  認知症の物忘れ
体験の一部を忘れる
(ヒントがあれば思い出せる)
体験したこと自体を全て忘れる
(ヒントがあっても思い出せない)
物忘れ(忘れっぽさ)を自覚している 物忘れの自覚に乏しい
探し物を努力して見つけようとする 探し物を誰かが盗ったということがある
作話はみられない 作話がみられる
作話:記憶の脱落を埋めるために事実と異なる答えをすること。
物忘れを取り繕うように実際にはない話を構成すること。
日常生活に支障はない 日常生活に支障をきたす
極めて緩徐にしか進行しない 進行性であり、悪化する

 

加齢に伴う物忘れ以外にも認知症とよく似た症状を呈する病気がいくつもあります。例えば、うつ病、甲状腺機能低下症、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、ビタミン欠乏症などがそうです。

気になる方は、ぜひ早めにご相談ください。

2016.08.27

家族が気付く認知症の手がかり

家族が気付く、認知症の全般的な初期症状

・話に「あれ」「それ」が多くなる。

・人柄が何となく変わったように見える。

・物事に関心がなくなり、投げやりに見える。

・どことなく、だらしない感じで怠惰に見える。

・失敗が多くなり、言い訳をすることが多くなる。

・人付き合いを避け、閉じこもるようになる。

・同じことを言ったり、したりする。

・くどくなったり、ささいなことで怒りっぽくなる。

早期のアルツハイマー型認知症の手がかり

・同じ内容の事柄を何度も繰り返し尋ねるようになった。

・電話に対応しながら調理をするなど、2つの作業を同時にするようになった。

・物の扱いが下手になったり、鍋焦がしなど調理ミスをすることが多くなった。

・季節にそぐわない身なりをしたり、おしゃれを面倒がるようになった。

・冷蔵庫に同じ品物がたまったり、同じものを買ってくることがある。

・探し物をしていることが多くなった。

・小銭が財布にあふれていたり、紙幣での支払いが多くなった。

・迷子になったり、運転中に道に迷うことが多くなった。

・診察日や予約時間を間違うことが増えた。

・薬の飲み忘れや飲み間違いが増えた。

早期の脳血管性認知症の手がかり

・ある日突然、物忘れが悪化したり、言葉が出にくくなったり、手足に力が入りにくくなったりしたことがある。

・高血圧、糖尿病、脂質異常症を指摘されている。

・好きだった趣味に興味を示さなくなり、自宅に引きこもったり、テレビを見ながら横になっていることが多くなった。

・ささいなことで泣いたり、感情をコントロールできないことが目立つようになった。

・夜間の不眠が目立つようになった。

2016.08.22

油と脂(トランス脂肪酸の話題)

最近、トランス脂肪酸による健康への悪影響が注目されています。いったいトランス脂肪酸とは何なのでしょうか。

「あぶら」には常温で液体の油と固体の脂とがあります。これらをまとめて油脂(ゆし)といいます。油脂は脂肪酸とグリセリンという分子からできています。

脂肪酸にはたくさんの種類がありますが、炭素の二重結合がない飽和脂肪酸と炭素の二重結合がある不飽和脂肪酸とに分けられます。この不飽和脂肪酸の二重結合は、シス型とトランス型とに分けられます。トランス型の二重結合がある不飽和脂肪酸のことをトランス脂肪酸といいます。

常温で液体の植物油から固体の脂を製造する加工技術である「水素添加」によって、トランス脂肪酸が生成することが知られています。水素添加によって製造される食品には、マーガリンやショートニングがあり、それらを原材料としたパン、ケーキ、ドーナツなどにはトランス脂肪酸が含まれています。

トランス脂肪酸は食品から取る必要はないと考えられており、取り過ぎた場合の健康への悪影響が注目されています。トランス脂肪酸を取る量が多いと、血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が増え、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が減ってしまうため、心臓病(冠動脈疾患)の危険度を高めることが示されています。

WHO(世界保健機関)はトランス脂肪酸の摂取量を総エネルギー摂取量の1%未満とするよう勧告しています。平均的な活動量の日本人では、1日あたり約2g未満という計算になります。現在、日本人のトランス脂肪酸の平均摂取量は、総エネルギー摂取量の0.5%未満(1日あたり約1g未満)になっているとされています。トランス脂肪酸の摂取量の多いアメリカでは、FDA(米国食品医薬品庁)が部分水素添加油脂を規制する決定をしています。一般に安全と認められ食品添加物としての使用が許可なく可能となるGRAS(Generally Recognized as Safe)の対象から除外したのです。日本ではこのような規制は出されていませんが、食事から取る脂質の量が多い人は、トランス脂肪酸の摂取量も多くなることが報告されているため、注意が必要です。

2016.08.15

経口補水液の作り方

熱中症、下痢、嘔吐、発熱などで脱水症状を起こしたときに有効とされる経口補水液。

その作り方をご紹介します。

経口補水液は市販されていて、所ジョージさんのCMで有名な、大塚製薬の「オーエスワン」などの商品があります。

水に食塩とブドウ糖を一定の割合で溶かすことで、吸収率を高めています。

通常のスポーツドリンクよりも塩分が多く糖分が少なくなっています。

経口補水液は、緊急時には、塩と砂糖を混ぜて自分で作ることができます。

水1Lに対して塩3g(小さじ1/2)と砂糖40g(大さじ4と1/2)を混ぜます。

水500ml分を作りたい時は、これを半分にして下さい。

味は「うすい」「まずい」と感じる人が多いと思います。

レモン1/2個を絞った汁を加えるのがオススメです。

食中毒を防ぐために、冷蔵庫で保管し、その日のうちに飲み切るようにしましょう。

特に、一度使ったペットボトルなどを利用する場合は、雑菌が混じらないよう洗浄、乾燥させてから使用するなど注意が必要です。

2016.07.27

熱中症

熱中症が起こるメカニズム

人間の体では、その活動によって常に熱が生み出されています。運動をせずにじっとしていても、脳や心臓や胃腸などの内臓は休みなく働いているため、絶えず熱が発生しています。同時に、体温の上昇を抑えるための機能も備わっています。暑いときには自律神経の働きで末梢血管が拡張し、皮膚に多くの血液が流れ込むことで、熱を外気に放出します。また、汗をかくことで、体の表面の温度を下げることができます。

この熱を作る働きと熱を逃がす働きのバランスが崩れた結果、めまい、立ちくらみ、手足がつる、筋肉のけいれん、だるさ、頭痛、吐き気などの症状が現れた状態を熱中症といいます。

体温調節機能を担っている中枢は、脳の視床下部という場所にあります。しかし、高温の環境に長時間いると、この体温調節機能が破綻し、体が暑さに対して適切に対処できなくなってしまいます。

熱中症が起こる要因

環境の要因

気温が高い、湿度が高い、風通しが悪い、日差しが強い、閉め切った室内など

身体の要因

二日酔い・寝不足といった体調不良、高齢者、乳幼児、糖尿病などの持病、肥満、低栄養状態など

行動の要因

炎天下での長時間労働、激しい運動、慣れない運動、水分が補給しにくいなど

熱中症の症状と分類

熱失神

めまい、立ちくらみ、一時的な失神、顔面蒼白

血管の拡張と水分不足により血圧が低下し、脳の血流が減少して起こります。

熱けいれん

筋肉痛、手足がつる、筋肉がけいれんする

大量に汗をかき、水分だけを補給して血液のナトリウム濃度が低下すると、筋肉に痛みを伴うけいれんが起こります。

熱疲労

だるさ、悪心・嘔吐、頭痛、判断力低下

大量に汗をかき水分の補給が追い付かないと、脱水状態になり熱疲労の症状が見られます。

熱射病

高体温、意識障害、言動が不自然

体温の上昇のため、中枢神経の機能に異常をきたした状態です。

熱中症かなと思ったら

① 涼しい場所に移動しましょう。建物があればエアコンの効いた屋内に入りましょう。

建物がない場合は、木陰に移動します。

② 衣服をゆるめましょう。服をゆるめて風通しを良くします。

ベルトやバンドをゆるめ、ネクタイは外してください。

③ 保冷材や氷枕で体を冷やしましょう。タオルをぬらしてあてたり、うちわや扇子であおいで冷やします。

脇の下、首まわり、脚の付け根といった大きな動脈が走っている場所に保冷材を当てると効率よく体を冷やすことができます。

④ スポーツドリンクなどで塩分や水分を補給しましょう。

ただし、嘔吐や意識障害のある時は無理に飲ませてはいけません。特に意識障害を認めるときは、すぐに救急車を呼ぶことが必要です。

2016.07.25

熱中症と漢方薬(白虎加人参湯)

熱中症の予防に使える「白虎加人参湯」(びゃっこかにんじんとう)という漢方薬を御紹介します。

白虎加人参湯は、5種類の生薬:①石膏(セッコウ)②粳米(コウベイ)③知母(チモ)④甘草(カンゾウ)⑤人参(ニンジン)の組み合わせで成り立っています。

石膏と知母は、体を冷やす効果を持つ生薬です。残りの粳米、甘草、人参は、胃腸の働きを高めて気や水の不足を補ってくれる生薬です。

そのため、夏の熱中症など、体があつくなったので冷やしたい、脱水状態にならないように補いたいというときに力を発揮します。

薬の本を見ると、効能・効果の欄に「のどの渇きとほてりのあるもの」と書かれています。

熱中症に白虎加人参湯。

生活の中に漢方を上手に取り入れて、快適に夏を過ごしましょう。

2016.07.25

夏バテと漢方薬(清暑益気湯)

夏バテに使える「清暑益気湯」(せいしょえっきとう)という漢方薬を御紹介します。

清暑益気湯は9つの生薬から成っています。

人参(ニンジン)や甘草(カンゾウ)が胃腸の働きを高めて気や水の不足を補い、黄耆(オウギ)や五味子(ゴミシ)が寝汗や無駄な発汗を防いで水の消耗を抑えてくれます。そのほか、血を補い全体の栄養不足を解消してくれる当帰(トウキ)や、水の吸収を改善する蒼朮(ソウジュツ)などを含んでいます。

薬の本には、効能・効果として「暑気あたり、暑さによる食欲不振・下痢・全身倦怠、夏やせ」と書かれています。

夏バテに清暑益気湯。

生活の中に漢方を上手に取り入れて、快適に夏を過ごしましょう。

2016.07.25

夏の食あたりと漢方薬(柴苓湯)

夏の食あたりに使える「柴苓湯」(さいれいとう)という漢方薬を御紹介します。

柴苓湯は、「小柴胡湯」(しょうさいことう)という漢方薬と、五苓散(ごれいさん)という漢方薬を合わせて作られています。

そのため、全部で12種類もの生薬が含まれています。

柴苓湯を構成している小柴胡湯の働きは、みぞおちのつかえ感や吐き気を解消してくれることです。一方、もう一つの構成要素である五苓散は、水の偏在を改善して下痢を治します。そのため、吐き気や下痢を伴う夏の食あたりに、柴苓湯が用いられるのです。

薬の本には、効能・効果として「水瀉性下痢、急性胃腸炎、暑気あたり、むくみ」と書かれています。

夏の食あたりに柴苓湯。

生活の中に漢方を上手に取り入れて、快適に夏を過ごしましょう。