生活習慣病

生活習慣病(慢性疾患)について

高血圧、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症(痛風)は、生活習慣によって発症・悪化し、動脈硬化を進行させる生活習慣病です。どれも症状に乏しいまま進行して、ある日突然、心筋梗塞や脳卒中を起こす可能性があります。できるだけ早期に適切な治療をはじめ、動脈硬化を進ませないようしっかりコントロールしていくことが重要です。また、食事療法・運動療法といった生活習慣の改善が不可欠です。

高血圧

高血圧血圧は血液が心臓から送り出される際に血管へかかる圧力のことで、高血圧は血圧が高い状態が続く病気です。自覚症状がほとんどないまま進行し、血管に高い圧力がかかり続けて動脈硬化を進ませます。また、動脈硬化があると血圧が上がりやすくなるため、悪循環を起こしやすい傾向があり注意が必要です。

高血圧治療ガイドライン

高血圧治療の指針となる日本高血圧学会のガイドラインが2019年に5年ぶりに改訂されました。ほとんどの方の目標血圧が130/80mgHgになり、75歳以上と尿蛋白のない慢性腎臓病の方では140/90mmHg未満となっています。
血圧は、緊張や動作などによって変動しやすいため、診察室で計測すると高めに、ご自宅で計測すると低めに出る傾向があります。上記の目標血圧は診察室血圧ですから、家庭血圧での具体的な目標値は75歳未満の成人で125/75mmHg未満、75歳以上で135/85mmHg未満とされています。家庭血圧の測定は、患者さんの治療継続率の改善に寄与し、お薬による過剰な降圧や不充分な降圧を確認するのに役立つとされています。また、ガイドラインでは、家庭血圧の臨床的価値は診察室血圧よりも高いことが示されており、家庭血圧と診察室血圧とに較差がある場合、家庭血圧による診断を優先することになっています。

高血圧の原因

複数の遺伝因子と、過剰な塩分、喫煙・飲酒、運動不足、ストレスといった環境因子とが、いくつも重なって発症すると考えられています。自覚症状がほとんどないため、知らない間に動脈硬化が進行し心筋梗塞、脳卒中、腎不全、閉塞性動脈硬化症などの発症リスクを上昇させてしまいます。肥満、糖尿病、脂質異常症などが合併していると、それぞれが軽度でも動脈硬化の進行を早めてしまうため注意が必要です。40~74歳においては、血圧のレベルと脳卒中・心筋梗塞による死亡にほぼ直線的な関連がある(血圧が高いほど脳卒中や心筋梗塞は増える)ことが分かっており、120/80mmHg未満が最もリスクが低いとされています。75~89歳においても、血圧が高くなると脳卒中や心筋梗塞による死亡のリスクは高くなる傾向は同様で、130/85mmHg以上で有意なリスク上昇が認められるとされています。
生活習慣以外に特定の原因がある高血圧を2次性高血圧と呼びます。代表的な病気は、睡眠時無呼吸症候群、原発性アルドステロン症、クッシング症候群、甲状腺機能亢進症、腎血管性高血圧、腎実質性高血圧などです。血圧治療をはじめる最初の段階でこれらの病気がないかチェックを行うことになっています。

高血圧の治療

まずは、減塩、肥満の解消と適正体重のキープ、運動習慣の継続、禁煙、節酒など生活習慣の改善を行います。これは他の生活習慣病や動脈硬化の発症・進行の予防にもつながるためとても重要です。血圧の数値や血圧以外の病気を持っているかどうかなどを総合的に判断し、各個人の脳卒中や心筋梗塞の危険度に応じて、必要があれば薬剤治療を行います。そのため、血圧がそれほど高くなく低リスクであれば生活習慣の改善のみで経過を見ることもありますし、高リスクであれば直ちに薬剤治療を開始することもあります。この際、血圧があまり高くなくても、糖尿病や心房細動など他の病気があると高リスクということがあるため注意が必要です。薬剤治療は、作用や効果の現れ方の異なる薬剤がたくさんあるため、状態やライフスタイルに合わせて処方しています。

生活習慣の改善

続けることが重要ですから、ストレスが少なく習慣にできる無理のない範囲からはじめましょう。

減塩

日本高血圧学会は、高血圧治療ガイドラインにおいて、1日の塩分摂取量は6g未満を推奨しています。高血圧の患者さんにおいて、1日6g未満を目標とした減塩が有効な血圧低下をもたらし、脳卒中や心筋梗塞の抑制が期待できるとしています。ただし、体格、栄養状態、活動度などに応じて適宜調整する必要があります。
減塩を物足りない味にしないためには、アミノ酸などのうまみ成分を増やすことが有効です。また、ハーブやスパイス、薬味などを使って変化を付けることをおすすめしています。なお、ほとんどの加工食品は塩分が多いのでできるだけ避けてください。使う場合は、減塩という表示だけでなく「塩分量」もしっかり確かめてください。
慣れてくると塩分をかなり減らしてもおいしく味わえるようになるため、最初はちょっとがんばって工夫しましょう。
カリウムは食塩(ナトリウム)の血圧上昇作用に拮抗的に作用するため、野菜・果物などカリウムを多く含む食物の摂取により降圧効果が期待できます。ただし、肥満や糖尿病のある方の果物摂取は適正なエネルギー摂取の範囲内にとどめる必要があります。

減量・適正体重のキープ

肥満は生活習慣病をはじめとした慢性疾患の発症・進行リスクを上昇させます。生活習慣病や動脈硬化の予防や進行防止には減量と適正体重のキープが不可欠です。

体格指数(BMI)が適正体重の判断基準になります。

体格指数(BMI)=体重(kg)÷{身長(m)×身長(m)}

BMI=22 標準体重
BMI≧25 肥満症
BMI≦18.5 低体重

日本人の肥満者を対象にした研究では、3%以上の体重減量で有意な降圧をきたすことが示されていますので、食事・運動などの生活習慣を改善し体重をコントロールしましょう。

節酒

飲酒習慣は血圧上昇の原因となることが分かっています。飲酒により一時的に血圧が低下することがありますが、長期に飲酒を続けると血圧は上昇に転じます。そのため、飲酒は適度な量にとどめましょう。高血圧の管理においては、男性では1日に日本酒1合、ビールなら中瓶1本、焼酎なら半合、ワインなら2杯(女性ではこれらの約半分)以下が適切な量とされています。

運動の習慣化

有酸素運動の降圧効果は多くの研究で確立しています。速歩、ジョギングのような持久性の有酸素運動が推奨されています。運動は生活習慣病の予防や進行防止のみならず、肥満解消、メンタルヘルス不調の予防、認知症予防などにもつながります。
状態によって内容は変わりますが、目安として「ややきつい」と感じる程度の、軽く汗ばむくらいの運動を30分、週に3回以上行うことを習慣にしましょう。高血圧においては、運動中の血圧上昇に注意する必要があり、安全性を考慮すると高強度の運動は勧められません。自己判断ではかえって悪化させてしまう可能性もありますので、かかりつけ医と相談してから行うようにしましょう。

禁煙

喫煙は末梢血管を収縮させ、最終的に動脈硬化をもたらすことが報告されています。喫煙は脳卒中や心筋梗塞のリスクを上昇させるだけでなく、癌や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などのリスクも上昇させるため、禁煙は非常に重要です。当院では禁煙外来も行っていますので、禁煙を決意された折にはお気軽にご相談ください。禁煙後に体重が増加して、かえって血圧が上昇するという方がいらっしゃいますので、禁煙後は体重管理に注意を払う必要があります。

薬物療法

高血圧は世界的にも多い疾患ですから、さまざまな薬剤があります。血圧の状態、体質や他の病気の有無、服用しやすいタイミングなどにきめ細かく合わせた処方が可能です。また、服用してみた感触や改善状態などによって処方を調整しています。処方する薬剤の情報をわかりやすくお伝えしていますが、ご不明な点やご不安がありましたら何でもご質問ください。

  • カルシウム拮抗薬
    血管を拡張して血圧を下げます。アムロジピンなどの薬剤が有名で、1日1回の内服で長時間しっかりと血圧を下げてくれます。効果の発現が緩徐なため副作用も少なく、有用性が高く評価されて最も頻用されています。まれに血管が拡張することによる動悸、頭痛、ほてり、むくみなどが起きることが知られています。

  • レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系薬
    血圧や循環血液量のコントロールにかかわるレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAA系)と呼ばれる体の仕組みに作用して血圧を下げます。このタイプにはアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、直接的レニン阻害薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬といった種類があります。心臓などの臓器保護効果や尿酸低下作用が確認されているものもあり、汎用されています。高齢者や慢性腎臓病の方では、腎機能を悪化させることもあるため、低用量から開始して、血液データを確認しながら使用することが望ましいと言えます。

  • 利尿薬
    尿の量を増やすことで血液の全体量を減らして血圧を下げます。主にサイアザイド系利尿薬という種類が降圧薬として用いられます。減塩が困難な高血圧や浮腫のある高血圧などに有用であり、心不全の予防効果も期待できます。副作用として、夏季の過剰降圧、低ナトリウム血症、低カリウム血症などに注意が必要です。
    糖尿病の治療薬として認可されているSGLT2(ナトリウム・グルコース共輸送体2)阻害薬というお薬は、利尿薬の分類には入りませんが利尿効果・降圧効果が報告されており、糖尿病を合併している高血圧の患者さんでは有用性が高いと考えられます。

  • β遮断薬
    交感神経の働きを抑制し、心臓や血管に過剰な刺激を与えないようにすることで血圧を低下させます。交感神経活性が亢進している若い人の高血圧、心筋梗塞後、頻脈合併例、甲状腺機能亢進症の合併、大動脈解離後などの場合に有用です。ただし、気管支喘息や房室ブロックなどの病気がある場合には使用が困難です。

代表的なお薬を挙げましたが、上記以外にも血圧を下げるお薬は複数あります。患者さんごとに異なる個々の状態に合わせて、より適切な薬を組み合わせて治療を行います。

糖尿病

糖尿病インスリンが充分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖という糖(血糖)が増えてしまう病気です。インスリンは膵臓から出るホルモンで、血糖を一定の範囲におさめる働きを担っています。血糖値のコントロールに不可欠なインスリンが働かない原因は大きく2つあります。1つは、膵臓の機能が低下して、充分なインスリンが作れなくなってしまう状態です。もう1つは、インスリン自体は作られているけれども、肥満などが原因でインスリンが効果を発揮できない状態です。糖尿病では、この2つが影響して血糖値が高くなってしまいます。
糖尿病では、血糖値がかなり高くならなければ症状が現れません。そのため、症状が無くても糖尿病になっており気付いていないという方が多くいます。高血糖による症状としては、喉が渇く、尿回数が増える、体重が減る、疲れやすいなどです。さらに悪化すると意識障害を起こすこともあります。

糖尿病のタイプ

糖尿病は、その成り立ちによっていくつかのタイプがあり、大きくは1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病、その他に分類されます。
1型糖尿病では、膵臓のインスリンを出す細胞(β細胞)が破壊されてしまいます。ほとんどインスリンが分泌されなくなるため、注射でインスリンを補う治療が必要になります。糖尿病全体の約5%を占めます。
2型糖尿病では、生活習慣が大きく影響します。遺伝的な要因に加えて、過食・運動不足・肥満などの環境的な要因によって発症します。糖尿病全体の約95%は2型糖尿病であり、インスリンが出にくくなったり、インスリンが効きにくくなったりします。
妊娠糖尿病は、妊娠中に初めて分かった、まだ糖尿病に至っていない血糖上昇を指します。妊娠すると胎盤から分泌されるホルモンの影響でインスリンが効きにくくなります。多くの場合、高血糖は出産のあとに改善しますが、妊娠糖尿病を経験した人は、将来、糖尿病になりやすいと言われています。

糖尿病の合併症

糖尿病は他の生活習慣病と同様に動脈硬化を進行させます。その結果、臓器が障害され、さまざまな合併症が生じます。糖尿病の合併症は数年から数十年の経過でゆっくりと生じてくるため、気付かないうちに進行して重い状態となることがあります。糖尿病の慢性合併症は細小血管症と大血管症とに分類されます。
細い血管が傷付いて生じる細小血管症には、糖尿病神経症、糖尿病網膜症、糖尿病腎症などがあります。これらが進行すると失明したり、透析が必要になる腎不全になったりすることがあります。比較的大きな血管が障害される大血管症には、心筋梗塞、脳梗塞、末梢動脈疾患による足壊疽などがあります。これらは命にかかわる状態になったり、足の切断などの可能性もあるため、合併症を起こさないよう治療を行うことが重要です。
一方で、感染症や脱水症、治療の中断や甘いジュースの飲み過ぎなどがきっかけとなり、異常な高血糖をきたすことで生じる急性の合併症も存在します。インスリン不足で血糖をエネルギー源として利用できなくなると、脂肪がエネルギー源として分解され、ケトン体という物質が増えます。その結果、体が酸性に傾いた状態になり、ひどい場合には昏睡状態となることがあります。これを糖尿病性ケトアシドーシスと呼びます。生命の危険を伴う緊急事態のため、速やかに治療を受ける必要があります。

がんリスクに備えて検診を

治療が進化してきたことで糖尿病の合併症で亡くなるケースは減少傾向にありますが、糖尿病患者の死因調査では悪性新生物(がん)で亡くなるケースが増加傾向にあります。糖尿病の方は、がんになるリスクが20%程度高いという研究結果があります。日本人では、特に大腸がん、肝臓がん、膵臓がんのリスク増加と関連しているとされています(ただし、血糖値が高いことが原因となって、がんが生じているのかどうかについては、まだ分かっていません)。食事や運動、禁煙・節酒などをしっかり行って血糖を適切にコントロールし、積極的に検診を受けるようにしましょう。

糖尿病の治療

血糖値を適切な範囲にコントロールして、糖尿病が無い人と同じ健康寿命を保つことが、糖尿病の治療の目的です。血糖コントロールの状態を確認する指標としてHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)があります。これは過去1~2か月の血糖値を反映する数値で、血液検査でわかります。糖尿病の合併症を起こさないためには、HbA1cを7%未満にしておくことが必要とされています。

食事療法

食事によって糖が体に取り込まれます。体に取り込まれる糖の量やエネルギーのバランスを調整するのが食事療法です。1日の適正なエネルギー摂取量は標準体重に身体活動量をかけて算出できます。

1日の適正なエネルギー摂取量(kcal)=標準体重(kg)×身体活動量

標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22

身体活動度
・デスクワークが多い:25~30(kcal/kg標準体重)
・立ち仕事が多い:30~35(kcal/kg標準体重
・力仕事が多い:35~40(kcal/kg標準体重)

食事療法のポイント
  • ゆっくり、よく噛んで食べる。
  • 規則正しく、バランスよく食べる。
  • 腹八分目でやめておく。
  • 夜遅く、寝る前には食べない。

間食(おやつ)について
食事以外に間食をすると体重が増えやすく、血糖値のコントロールが難しくなります。

間食の取り方のポイント
  • お菓子を買うときはカロリー量を見てから買いましょう。
  • 個包装に分かれた食べきりのミニサイズを買いましょう。
  • ダラダラ食べず、量を決めて食べましょう。
  • 味わって、ゆっくり食べましょう。
  • 夕食後に食べるのはやめましょう(日中に食べましょう)。
  • 間食後は外出し、買い物などで体を動かしましょう。
  • お菓子を目につくところに置かないようにしましょう
運動療法

有酸素運動によって筋肉の血流が増えると、糖が細胞の中に取り込まれて血糖値が下がります。また、筋肉の量が増え脂肪の量が減ることで、インスリンの効果が高まり、血糖値が下がりやすくなります(これをインスリン抵抗性の改善と呼びます)。なお、運動をやめてしまうと3日程度で効果がなくなってしまいます。そのため、肥満が解消しても運動を継続的に行いましょう。また、運動には心肺機能や骨の強化という効果も期待できます。
ただし、激しい運動を急に始めると腰や膝の関節を痛めるなど思わぬ体の不調が起こります。加えて、激しい運動を行うとエネルギーを補充しようとして血糖値を上げるホルモンの分泌が増加したり、心臓や腎臓に負担をかけることもあります。そのため、最初は軽い運動から、少しずつ強度を上げて行きましょう。また、運動前の準備体操、運動後の整理体操を行って下さい。
インスリンの効果を高めて血糖値を下げるには、中等度(ややきついと感じる程度)の強度の有酸素運動と、筋力トレーニングとを組み合わせることで、より良い治療効果が生まれることが分かっています。有酸素運動は、ウォーキング・ジョギング・水泳などの全身運動です。ウォーキングであれば、背筋を伸ばし、やや大股で、軽く腕を振り、やや汗ばむ程度で1日30~60分程度、少なくとも週3回は行いましょう。1週間に150分以上行うことが推奨されます。運動の際は、次の式を参考に、心拍数を測りながら行うと良いでしょう。

運動時の目安となる心拍数の簡易式(カルボーネン法)

[(220-年齢)-安静時心拍数 ] ×(強度÷100)+安静時心拍数
*例:65歳で安静時心拍数70回/分の方が強度40%の運動をする場合
 [(220-65)-70] ×(40÷100)+70 =104回/分 が目標心拍数となります。
*強度は普段から活動的な方は50%、運動不足を感じる方は40%、足腰の筋力低下がある方や安静時心拍数が80回/分以上の方は30%で計算してください。

高齢の方や循環器系の持病のある方などは、一律に運動強度を決めることができないため、主治医とよく相談してください。また、夏の炎天下や冬の寒冷時に無理して運動することは避けてください。

運動を禁止または制限した方がよい場合
  • 血糖値が異常に高いとき(空腹時血糖が250mg/dl以上)。
  • 脱水症や感染症があるとき。
  • 網膜症が進んでいたり、眼底出血があるとき。
  • 腎臓の病気が進んでいるとき。
  • 足に皮膚潰瘍や壊疽があるとき。
  • 心臓や肺の重い病気があるとき。
  • 骨や関節の病気があるとき。
薬物療法

多数の薬剤があるため、患者様の状態やライフスタイルに合わせた処方を行います。内服薬以外にも、インスリンの注射製剤を使うことがあります。

インスリンを出しやすくする薬
  • スルホニル尿素薬
    膵臓からのインスリンの分泌を促進します。
  • グリニド薬
    短時間の膵臓のインスリン分泌を促進します。食直前に内服し食後の高血糖を改善します。
  • DPP-4阻害薬
    インクレチンというホルモンの働きを強めてインスリンの分泌を促進します。
インスリンを効きやすくする薬
  • ビグアナイド薬
    肝臓からの糖の放出を抑えます。また、消化管からの糖吸収の抑制や、筋肉でのインスリンの効きを改善する働きがあります。
  • チアゾリジン薬
    筋肉、肝臓、脂肪組織に働きかけ、インスリンの効きを改善します。
糖の吸収や排泄を調整する薬
  • αグルコシダーゼ阻害薬
    小腸での糖の分解・吸収を遅らせます。食直前に内服し食後の高血糖を改善します。
  • SGLT-2阻害薬
    腎臓で血液から尿への糖の排泄を促進します。

脂質異常症

脂質異常症血液に含まれている脂質のうち、増減する脂質の種類によって3つのタイプに分類できます。LDL(悪玉)コレステロールが高くなる高LDLコレステロール血症、HDL(善玉)コレステロールが低くなる低HDLコレステロール血症、中性脂肪(トリグリセライド)が高くなる高トリグリセライド血症の3つです。

  • LDLコレステロール
    血液中でコレステロールを肝臓から末梢組織に運んでいますが、多すぎると血管の壁に入り込み、動脈硬化を引き起こすため、悪玉コレステロールと呼ばれます。
  • HDLコレステロール
    血管壁の余ったコレステロールを肝臓に戻し、動脈硬化を進行させないように働くため、善玉コレステロールと呼ばれます。
  • 中性脂肪
    多すぎると肥満や脂肪肝を起こし、動脈硬化を促進させるもとになります。

コレステロールは1日のうちであまり変化しませんが、中性脂肪は食事の影響を強く受け食後数時間かけて上昇します。

原因

大部分の脂質異常は食生活の欧米化・運動不足・体重増加など生活習慣が主な原因になります。生活習慣の乱れから生じるもののほか、遺伝的な要因による家族性高コレステロール血症や、甲状腺機能低下に伴うもの、ステロイドなどのお薬によるものなどがあります。
脂質異常は、それだけでは症状はありませんが、動脈硬化を進行させるため全身の動脈が硬くなり、しだいに血管の内側が狭くなっていきます。血液中に脂質が多い状態が続くと、血管の壁に余分な脂質が沈着し、プラークと呼ばれる塊が作られます。不安定なプラークが破れると、破れた部分を修復するため血小板が集まり血栓が形成されます。血栓が血管をふさいでしまうと、血流の途絶えた組織は壊死します。これが脳で起これば脳梗塞、心臓で起これば心筋梗塞を発症することになります。

治療

血液検査の基準値はみんな同じですが、脂質異常の治療目標値は一人ひとり異なります。糖尿病・高血圧・喫煙など動脈硬化を進行させる因子を持っている方は、より強力に治療をする必要があります。吹田スコア(心筋梗塞の発症危険度を予測するスコア)などを参考に治療方針を決定します。

食事療法

肥満傾向があれば、まずは標準体重を目標に減量しましょう(糖尿病の食事療法の項を参照
)。食物繊維がコレステロールの吸収を抑えるため、たっぷり取るよう心がけます。コレステロールの摂取量は1日300mg以下が目安です。レバー、たらこ、卵黄などのコレステロールを多く含む食品を控えましょう(レバニラ炒め、親子丼、オムレツなどがお好きな方は要注意です)。摂取する脂肪の種類も大切で、悪玉(LDL)コレステロールを上昇させる質の悪い脂肪と、悪玉(LDL)コレステロールを低下させる質の良い脂肪とがあります。

  • 質の悪い脂肪
    ラード、ベーコンなどに含まれる動物性の脂肪
    ケーキ・ドーナツ・アイスクリームなど洋菓子に含まれる脂肪
  • 質の良い脂肪
    サバ・イワシ・アジなどに含まれる魚類の脂肪
    オリーブオイルなどの植物性の脂肪

清涼飲料水やスナック菓子は糖質が多く中性脂肪を上昇させやすいので摂取を控えましょう。また、過度のアルコール摂取は肝臓での中性脂肪の合成を増加させるとともに、脂肪肝の原因となるため、飲酒を控えることが必要です。

運動療法

運動によって中性脂肪が低下し、善玉(HDL)コレステロールが上昇する効果が期待できます。(運動療法については糖尿病の運動療法の項を参照)
日常生活で運動する時間を作ることが難しい場合、「エレベーターを使わず階段を使う」「バス停を1つぶん歩く」「自転車ではなく徒歩で行く」など生活パターンを変えずに行える運動を考えましょう。

薬物療法

それぞれの脂質の数値や全身状態などに合わせた処方を行います。薬物療法を行っている場合も、食事療法と運動療法は不可欠です。定期的に検査を受けて改善状態をしっかり確認することが重要です。現在処方される薬には以下のようなものなどがあります。

  • HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系)
    肝臓でのコレステロール合成を抑制する。悪玉(LDL)コレステロールを低下させる力が強い。
  • 小腸コレステロールトランスポーター阻害薬(エゼチミブ)
    腸からのコレステロールの吸収を抑制する。
  • PCSK9阻害薬
    血液中から肝臓への悪玉(LDL)コレステロールの取り込みを促進する。
    注射剤のみしかなく、使用はスタチン系で効果不充分の場合に限られる。
  • PPARα活性化薬(フィブラート系)
    肝臓での中性脂肪の合成を抑制したり分解を促進する。
  • エイコサペンタエン酸(EPA)
    青魚に含まれる成分から作られた薬で、中性脂肪を下げたり血液をサラサラにする。

高尿酸血症(痛風)

高尿酸血症(痛風)尿酸とは、遺伝情報を司る核酸の原料となるプリン体という物質の分解産物で、通常は尿から排泄されます。プリン体は主に体内で生成されますが、食物全般にも含まれる物質で、ビールに含まれるプリン体は麦芽に由来するものです。
不適切な食生活や飲酒習慣などにより、尿から排泄されるはずの尿酸が体内で一定量をオーバーすると、さまざまな問題を引き起こします。血液中の尿酸値が7.0mg/dLを超えた状態を高尿酸血症と呼び、高尿酸血症が続くと尿酸が結晶化して全身で悪さをします。尿酸の結晶が足の親指などの関節に溜まって炎症を起こしたものが痛風です。他にも、腎臓に沈着して腎臓の機能を低下(痛風腎)させたり、尿中で結晶化して尿路結石を起こしたりします。
また、高尿酸血症が心筋梗塞の発症や死亡と関連することがわかっています。

原因

食生活の欧米化や肥満の増加などを背景に、プリン体を多く含む食品を過剰に摂取することで尿酸値が上昇します。アルコールが代謝される際にも尿酸が上昇します。アルコールの中でも、ウイスキーやブランデーなどに比べてビールにはより多くのプリン体が含まれています。
しかし、生活スタイルが同様であっても、高尿酸血症を発症する人としない人がいることから、遺伝的要因が関与していると考えられてきました。現在、尿酸に影響する複数の遺伝子変異が特定されています。
そのほか、腎機能の低下や血液の病気が原因となって尿酸値が上昇することがあります。
また、利尿薬などのお薬が尿酸値を上昇させることもあります。

治療

健康診断などで尿酸値が高いと指摘された時点で、生活習慣の改善を含めた適切な対処をはじめましょう。尿酸の数値が7.0mg/dL以上で、すでに痛風発作を起こしている場合には薬物治療が必要です。尿酸の結晶を溶解除去して痛風の再発を防止するには、尿酸値を6.0mg/dL以下に維持する必要があります。尿酸値が下がってからも、尿酸の結晶が溶けるまでには時間がかかります。地道にしっかり治療を続けましょう。
一方、無症状の高尿酸血症では、8.0mg/dL以上が薬物治療導入の目安となります。

食事療法

肉類の摂取量が多い、アルコールの摂取量が多い、砂糖入りソフトドリンクの摂取量が多いといった食生活は、痛風発症を増加させることが分かっています。そのため、これらを取り過ぎないように注意することが大切です。逆に乳製品の摂取量が多いと痛風発症を低下させるとされていますので、積極的に取り入れましょう。
プリン体を多く含む食品の摂取を控え、プリン体の1日の摂取量が400mgを超えないようにすることが目標です。特にプリン体が多い食品には、レバー、白子、エビなどがあります。
また、尿量が1日2000ml以上となるよう飲水量を増やすことで、尿酸の排泄を促進し、尿路結石を防ぐ対策になります。

運動療法

激しい運動・無酸素運動は尿酸値を上昇させて痛風発作のきっかけになる可能性がありますので避けましょう。適正な体重を目標に有酸素運動を継続的に行うことが必要です。

薬物療法

痛風結節がある・痛風発作を起こしたことがある場合、生活習慣改善では尿酸値が下がらないケース、高血圧など他の生活習慣病や尿路疾患を合併しているケースには薬物療法が必要です。目標値は尿酸値6.0mg/dL以下のコントロールですが、急激に尿酸値を下げると痛風発作を起こすことがあるため少しずつ下げていくことが重要です。主に尿酸生成抑制薬や尿酸排泄促進薬を使って治療します。

痛風発作時の治療

痛風発作時に尿酸値を下げる治療を行うと状態が悪化することがあるため、発作中に尿酸降下薬の開始はせず、まず痛みに対して消炎鎮痛薬(ナプロキセンなど)による治療を行います。痛みがおさまって状態が落ち着いてから尿酸値を下げる治療を開始します。なお、痛風発作の極期ではなく前兆期の場合は、コルヒチンというお薬も有効な場合があります。尿酸値を適切にコントロールする治療を行わないと痛風発作を何度も繰り返し、尿路結石や腎障害のリスクも高まってしまうので、しっかり治療を続けていきましょう。

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