<新たな肺炎球菌ワクチンの登場>
日本で使用可能となった「キャップバックス」という新しい肺炎球菌ワクチンについて解説します。
2025年10月に、肺炎球菌に対する新たなワクチン「キャップバックス」が登場しました。肺炎球菌には90種類以上のタイプが存在し、この「タイプ」のことを「血清型」と呼びます。「キャップバックス」は成人に特化して開発されたワクチンで、成人で問題となる血清型が時代とともに変化していることを踏まえて、ワクチンに含まれる血清型が選ばれました。そのため、「キャップバックス」は、侵襲性肺炎球菌感染症の原因となる血清型のうち80.3%をカバーしています。現在の肺炎球菌ワクチン定期接種に使用されている「ニューモバックス」の血清型カバー率が56.6%であることを考えると、「キャップバックス」は性能がかなりアップしたと言えそうです。また、これまで使用されていた「ニューモバックス」は約5年間で効果が減弱するため再接種が必要でしたが、今回登場した「キャップバックス」は1回の接種で生涯にわたる長期的な免疫効果が期待でき、再接種が不要になる点が大きな特徴です。
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血清型カバー率 |
効果の持続 |
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現在の定期接種「ニューモバックス」 |
56.6% |
約5年間で減弱 |
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新しく登場した「キャップバックス」 |
80.3% |
おそらく終生持続 |
「キャップバックス」の登場を受けて、日本感染症学会・日本呼吸器学会・日本ワクチン学会の合同委員会によって「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方」が改訂されました。それによると、すでに「ニューモバックス」を定期接種している人が、5年間経過したあとにまた再接種することは「原則として選択肢としない」ことになりました。「ニューモバックス」を定期接種した人は、1年以上あければ「キャップバックス」を接種することが可能とされています。
参考サイト
:65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第7版)
https://www.jrs.or.jp/activities/guidelines/file/65yrs_vaccine_ver7_20251027.pdf
‐まとめ–
・キャップバックスは成人の侵襲性肺炎球菌感染症の原因となった血清型のカバー率が高い。
・キャップバックスは1回の接種で生涯にわたる長期的な免疫効果が期待でき再接種が不要。
・ニューモバックスを定期接種した人は、1年以上あければキャップバックスを接種することが可能。
肺炎予防のためにできることとして、毎日の感染対策(手洗い・マスクなど)、基礎疾患の治療、免疫力を低下させない生活習慣(食事・睡眠など)に加え、肺炎球菌ワクチンの予防接種も有用です。ここに「キャップバックス」という新たな選択肢が登場したことは、とても心強いことだと思います。
<肺炎について>
加齢や基礎疾患によって、肺炎のリスクは高くなります。
60~64歳と比べた肺炎の死亡率は、65~69歳で2.06倍、70~74歳で4.75倍、75~79歳では9.67倍というデータがあります。
また、肺炎にかかるリスクは、健康な人と比べて、がんで1.7倍、糖尿病で1.9倍、慢性肺疾患で5.2倍、慢性心疾患や慢性腎疾患で2.6倍、慢性肝疾患で2.1倍というデータがあります。
<肺炎球菌について>
日常でかかる肺炎(市中肺炎)の原因となる細菌の第1位は肺炎球菌です。肺炎球菌には90種類以上の血清型が存在します。
肺炎球菌感染症には、肺炎のほかに、中耳炎や副鼻腔炎があります。肺炎球菌感染症のうち、髄液や血液などの本来無菌の部位から肺炎球菌が検出される感染症を侵襲性肺炎球菌感染症と呼びます。侵襲性肺炎球菌感染症になった人の22.1%が死亡し、8.7%に後遺症が残ったというデータがあります。
肺炎球菌ワクチン「キャップバックス」Q&A
Q1.肺炎球菌はどのような病気を引き起こしますか?
A.肺炎のほか、中耳炎、副鼻腔炎、髄膜炎、菌血症などを引き起こします。
Q2.侵襲性肺炎球菌感染症とは何ですか?
- 血液や髄液など、本来は無菌の部位に肺炎球菌が侵入する重篤な感染症です。
Q3.血清型とは何ですか?
A.肺炎球菌の「種類」のことで、90種類以上存在します。ワクチンは特定の血清型に対して効果を発揮します。
Q4.従来の肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス)との違いは何ですか?
A.血清型のカバー率が高く、1回の接種で長期的な免疫効果が期待できる点が大きな違いです。
Q5.キャップバックスの血清型カバー率はどのくらいですか?
A.侵襲性肺炎球菌感染症の原因となる血清型の80.3%をカバーしています。
Q6.接種を検討したほうが良いのは、どのような人ですか?
A.がん、糖尿病、慢性肺疾患、慢性心疾患、慢性腎疾患などの基礎疾患がある方や、高齢者は、肺炎リスクが高いため接種が検討されます。
Q7.以前に、ニューモバックスを接種していますが、キャップバックスは接種できますか?
A.はい。ニューモバックス接種から1年以上経過していれば接種可能です。
Q8.インフルエンザワクチンなどとの同時接種は可能ですか?
A.医師の判断により同時接種が可能です。担当医にご相談ください。
Q9.キャップバックスは定期接種ですか?
A.現時点では任意接種として扱われています。
Q10.肺炎予防のためにワクチン以外にできることは何ですか?
A.手洗い・マスクなどの日々の感染対策、基礎疾患の治療、免疫力を低下させない生活習慣(食事・睡眠など)が重要です。















