動脈硬化性の心血管疾患の二次予防における、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の管理に関して、新しい考え方が日本動脈硬化学会から発表されましたので解説します。
① 新しい考え方が発表された背景
動脈硬化性心血管疾患とは、コレステロールなどが血管の壁に蓄積して血管が狭くなる動脈硬化が原因で起こる、心筋梗塞・狭心症・脳梗塞・下肢閉塞性動脈硬化症などの病気の総称です。これらの病気は、再発リスクが高いため、二次予防が重要となります。二次予防とは、病気をすでに発症してしまった人が、その病気の再発や悪化を防ぐために予防策を取ることを指します。
動脈硬化性心血管疾患の二次予防において、LDLコレステロールを厳格に低下させることが有効であることがわかっています。そのため、欧米のガイドラインでは、LDLコレステロールの管理目標値の引き下げが進んでいます。しかし、日本においては、やや緩やかな目標設定がされてきました。近年、日本人においてもリスクが低くないことが明らかとなり、最新の研究に基づいたLDLコレステロール管理の見直しが必要となっていました。
② 新しいLDLコレステロール管理のポイント
動脈硬化性心血管疾患を急性冠症候群、慢性冠症候群、アテローム血栓性脳梗塞、末梢動脈疾患に分け、それぞれの管理について以下の目標値が設定されています。
動脈硬化性心血管疾患の種類 LDLコレステロール目標値
冠動脈疾患
急性冠症候群・・・・・・・<55 mg/dL
慢性冠症候群・・・・・・・<70
アテローム血栓性脳梗塞・・・・<70
末梢動脈疾患・・・・・・・・・<70
●不安定狭心症・急性心筋梗塞(急性冠症候群)
急性冠症候群とは、不安定狭心症や急性心筋梗塞が該当します。これらは、発症早期から再発リスクが高いため、薬剤による強力な治療が推奨されており、LDLコレステロール<55mg/dLという厳格な管理が求められています。
●安定狭心症(慢性冠症候群)
慢性冠症候群とは、安定(労作性)狭心症が該当します。LDLコレステロールの管理目標は<70mg/dLとされていますが、家族性高コレステロール血症、多枝病変(複数の血管に狭窄があること)、2回以上の急性冠症候群の既往、他の動脈硬化性疾患の合併がある場合には、<55mg/dLを考慮すべきとされています。
●脳梗塞(アテローム血栓性脳梗塞)
アテローム血栓性脳梗塞も再発リスクが高く、薬剤による二次予防効果が確立しています。LDLコレステロールの管理目標は<70mg/dLとされています。
●末梢動脈疾患
ここでいう末梢動脈疾患とは、以前は「下肢閉塞性動脈硬化症」あるいは「下肢慢性動脈閉塞症」と呼ばれていた病気で、足の動脈が狭くなったり詰まったりして血液の流れが悪くなる病気です。やはり薬剤治療による効果が示されており、LDLコレステロールの管理目標は<70mg/dLとなっています。
<まとめ>
LDLコレステロールを厳しく下げることで、動脈硬化性心血管疾患の再発リスクを下げることができるという最新の研究結果を踏まえ、より低い目標値が示されています。当院では、これら最新の研究成果をもとに、患者様お一人お一人のご希望や年齢・生活背景・合併疾患・お薬の副作用リスクなどを総合的に勘案しながら、病気の再発予防に努めて参ります。
参考文献
動脈硬化性心血管疾患の二次予防のための脂質管理
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41423223/
FAQ①
Q. なぜLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を今までより厳しく下げる必要があるのですか?
A. 心筋梗塞や脳梗塞などを一度起こした方は、再発リスクが高いことが分かっています。最新の研究で、LDLコレステロールをより低く保ったほうが再発を防げる可能性があることが明らかになり、その結果、目標値が見直されました。
FAQ②
Q. 「二次予防」とはどういう意味ですか?
A. 二次予防とは、すでに心筋梗塞や脳梗塞などを経験した人が、再発や悪化を防ぐために行う治療や生活管理のことです。LDLコレステロールの管理は、その中心的な対策の一つです。
FAQ③
Q. どんな病気が「動脈硬化性心血管疾患」に含まれるのですか?
A. 心筋梗塞・狭心症・脳梗塞(アテローム血栓性)・末梢動脈疾患(足の血管の病気)が含まれます。いずれも動脈硬化が原因で起こる病気です。
FAQ④
Q. 急性心筋梗塞の場合、LDLコレステロールの目標値はいくつですか?
A. 不安定狭心症や急性心筋梗塞では、再発リスクが特に高いため、LDLコレステロール55mg/dL未満という、最も厳格な管理目標が推奨されています。
FAQ⑤
Q. 安定した狭心症でもLDLコレステロールを厳しく下げる必要がありますか?
A. 安定狭心症では基本目標は70mg/dL未満ですが、
・家族性高コレステロール血症
・複数の冠動脈病変
・心筋梗塞の既往が複数回ある
・他の動脈硬化性疾患を合併
といった場合は、55mg/dL未満を目指すことが検討されます。
FAQ⑥
Q. 脳梗塞を起こした場合もLDLコレステロール管理は重要ですか?
A. はい。特にアテローム血栓性脳梗塞では再発リスクが高く、LDLコレステロールを70mg/dL未満に管理することで、再発予防効果が期待できます。
FAQ⑦
Q. 足の血管の病気(末梢動脈疾患)でもLDLコレステロールは同じ目標値ですか?
A. はい。末梢動脈疾患も動脈硬化が原因の病気で、心筋梗塞や脳梗塞のリスクも高いため、LDLコレステロールは70mg/dL未満が目標とされています。
FAQ⑧
Q. 食事や運動だけで、この目標値まで下げられますか?
A. 生活習慣の改善はとても大切ですが、二次予防ではそれだけでは不十分なことが多く、薬物治療を組み合わせることが基本となります。















